東京都労働相談情報センター

女性労働問題に関する相談事例


1.男女の賃金格差

相談内容
相談者は30年勤務で、現在係長級。基本給が同年齢・同役職の男性と比較して低く、これに伴い退職金にも格差が発生してくる。加入する労働組合で社内の賃金状況を調査したところ、相談者の基本給は同年齢・同役職の最低額であり、男女間で賃金格差が存在することが明らかになった。組合を通じて格差の改善を求めたが、「業務の性格上、女性の配置が限られている部署があり、結果的に人事評価で男性と差がつくのはやむを得ない。この賃金格差は人事評価による格差に基づくものであり、男女差別はしていない」として聞き入れられない。
経過・対応
組合の要請を受け、センターが会社に事情を聞いたところ、従業員構成のほとんどが男性であり、女性は男性より配置を限定しているという。そこでセンターは、(1)女性についてのみ配置を限定するのは、男女雇用機会均等法に違反するおそれがあること、(2)人事評価やそれに基づく賃金の格差が、配置上の男女差別を原因としているのであれば、賃金格差の合理的理由があるとはいえず、男女同一賃金の原則に反するおそれがあることを説明し、相談者の取扱い及び格差の改善策について組合と交渉を進めるよう促した。
当初、会社側は難色を示したが、センター立会いで交渉を進めた結果、(1)全ての配置を男女同一とすること、(2)相談者をはじめ、配置上の男女差別を原因として賃金格差が見られる女性労働者には、基本給に一定額の加給措置を施し、退職金計算にも反映させること、(3)今後女性労働者を積極的に活用していくため、ポジティブ・アクション等の取り組みについて、労使間で交渉を進めていくこと、で合意した。

2.育児休暇の取得

相談内容
産休が明ける直前に、育児休暇を取りたいと申し出た。会社は「産休の制度はあるが、育休の制度はない。復帰できないなら辞めてもらうしかない」と退職を迫られた。今の会社は10年間勤めていて、仕事にも慣れているので辞めたくない。
経過・対応
センターから社長に、育児休業は会社の規定に関わらず取得できる等、育児休業法の規定や、労働基準法で産休後の解雇が規制されていること等を説明した。社長は「相談者は産休が明けたら復帰するとの話だったので、代わりの人員を考えていなかった。急に申し出られてこちらも迷惑したので、強く否定してしまった」との話。
ひとまず検討を促し、相談者に報告すると、相談者も急で迷惑をかけたことを認めたので、話し合いを勧めた。後日、相談者から、打ち合わせ不足を謝り、育児休暇が認められたことが報告され、解決となった。

3.産休後復帰する際、正社員からパートになるよう強制

相談内容
産休後の復帰について会社から「復帰するならば、別の事業所に転勤してもらうことになる。それが無理ならパート勤務しかない」と連絡があった。転勤を打診された事業所は家から遠く、とても育児をしながら通勤できないので、パートにならざるを得なかったが、納得がいかない。
経過・対応
センターで会社に事情を聞くと、「当社は残業も多く、育児をしながら正社員は無理だと思ったので勧めただけ。強制したつもりはない」との話。センターは、育児休業法で育児中の労働者の配置の配慮や勤務時間の短縮などの措置が定められている旨を説明した。現職復帰が原則の中、今回のパート勤務への同意は強制的に見受けられることを指摘し、話し合いを提案すると、会社は再考することを約束した。
後日、会社から「既にポストがなく、現職復帰の要望には応じられないが、勤務時間短縮の措置を配慮するので、別の事業所勤務を考えてほしい」と相談者に連絡があり、相談者も短時間勤務ならば多少遠くても通えるとして、会社の案を受け入れた。

4.『女性だから』というだけの理由で不採用

相談内容
公園の造園の求人に応募したところ、面接のときに「うちの仕事はきついから女性は無理だよ」と言われ、不採用となった。自分は学生時代からスポーツもしているし、体力的には自信がある。『女性だから』というだけの理由で不採用になったのならば納得がいかない。
経過・対応
センターが会社に事情を聞いたところ、「今までも女性を採用したことがない。男女雇用機会均等法で男性のみの求人広告が出せなくなったが、まさか女性が応募してくるとは思わなかった。仕事は体力的にも厳しいし、まわりも男性ばかりだから女性では長続きしないと考えて不採用とした」とのことであった。
センターでは、男女雇用機会均等法及び労働基準法の趣旨について説明し、単に「女性だから」という理由で採用しないのは均等法第5条に違反し、違法であること等を伝えた。相談者は既にほかに職を得ており、採用・不採用について争うつもりはないということで、会社側の面接時における対応への謝罪を求める、とのことであったので、その旨を会社に申し入れた。会社側では検討の末、謝罪文を相談者に送付することを約束した。後日、相談者から謝罪文を受け取ったとの報告があり、解決した。