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職場のメンタルヘルス対策推進事業

ポジティブメンタルヘルスシンポジウム開催報告 (平成28年11月17日開催)

 平成28年11月17日(木曜日)、日経ホール(東京都千代田区)にて、「ポジティブメンタルヘルスシンポジウム&相談会」を開催し、400名を超える多数の御来場をいただきました。当日は、東京大学大学院准教授の島津明人先生より「職場のポジティブメンタルヘルス:健康でいきいきと働ける職場に向けて」と題して御講演をいただきました。

 その後、甲南大学教授の北居明氏から組織開発に関する新たな取組である「アプレシエイティブ・インクワイリー」を御紹介いただき、続いて、日本ビルコン株式会社管理部係長の深田尚弘氏、株式会社マックツイスト取締役・営業部長の奥田美保氏から両社での"ポジティブメンタルヘルス"の取組事例を御紹介いただきました。

 シンポジウム後半では、特定社会保険労務士・産業カウンセラーの中辻めぐみ氏のコーディネートの下、島津氏、北居氏、深田氏、奥田氏にご登壇いただき、「健康でいきいきと働ける職場づくり:経営学と取組事例から考える」と題してパネルディスカッションを行いました。

 また、会場ホワイエでは個別相談会を同時開催し、産業カウンセラーや社会保険労務士、臨床心理士等の専門家が企業からの相談に応じました。

 

 
シンポジウム要旨

 

基調講演 「職場のポジティブメンタルヘルス:健康でいきいきと働ける職場に向けて」 

   島津 明人 氏 (東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 准教授)

 

<これからのメンタルヘルス対策と経営・マネジメント部門としての取組の重要性>

● 従来のメンタルヘルス対策は、疾病や損害、障害、不具合、これをいかに少なくしていくか、個人や組織の弱みをいかに支えていくか、これらを背景に、治療から予防を重視したものである。
● これからのメンタルヘルス対策は、これらに加え、①一人ひとりや組織全体の生産性をいかに上げていくか。②キャリアをどのようにして伸ばしていくか。③従業員のモチベーション、いわゆる動機づけをいかに高めていくかといったような、成長をどう促していくかが大事になってきている。
● 従来の医療や産業保健では、生産性向上やモチベーションアップに関することについて、トレーニングはあまり受けておらず、これらを業務の中で取り入れていたり、トレーニングを受けていたりするのは、まさしく経営であるマネジメント、あるいは人事である。そのため、これからのメンタルヘルス対策は、医療や産業保健、経営、マネジメントといった部門がお互い協業しながら新しい形での取組をしていかなくてはならないと考えられる。
● そして、従来の悪いところを探していってそれを少なくしていくアプローチ以上に、組織が持っている良いところは何なのか、あるいは、一人ひとりが持っている良いところは何なのか、これを見つけ出して増やしていくようなアプローチが必要である。

<ワーク・エンゲイジメントと仕事への効果>

● ポジティブメンタルヘルスを進める上で重要なキーワードである「ワーク・エンゲイジメント」、これは①仕事に誇り(やりがい)を感じ、②仕事に対して熱心に取り組み、③仕事から活力を得ていきいきとしている状態をいう。
● ワーク・エンゲイジメントは、3つの要素が相まって、仕事を大事であるとか楽しいと思い、たくさんのエネルギーを注いでいる状態を指し、バーンアウト(燃え尽き症候群)やワーカホリズム(仕事中毒、仕事依存)とは異なる。英語で言うと、ワーク・エンゲイジメントは「I want to work」、ワーカホリズムは「I have to work」と表現でき、理解しやすいと思う。
● ワーク・エンゲイジメントもワーカホリズムも仕事に対してたくさんのエネルギーを注ぐ点は共通しているものの、その"頑張る理由"は異なる。ワーク・エンゲイジメントは仕事が楽しいからたくさんの努力をする「夢中型の努力」であるのに対し、ワーカホリズムは仕事をしなくてはならないと思いながら努力する「我慢型の努力」である。
● ワーク・エンゲイジメントとワーカホリズム、この2つの違いが私たちの健康度や生活の満足度、仕事のパフォーマンスにどのような影響をもたらすのか、日本の労働者を約2年間追跡した結果、ワーカホリズムは健康度、生活の満足度ともに低下し、仕事のパフォーマンスについては上がりも下がりもしないことがわかった。一方、ワーク・エンゲイジメントは健康度、生活の満足度、仕事のパフォーマンス全てが上昇した。
● 従業員の一生懸命頑張っている姿は、一見すると皆同じように見えるが、「夢中型の努力」をしているのか「我慢型の努力」をしているのか、その努力の方向性の違いによって2年後には全く正反対の結果が表れてしまう。皆さんの目の前の従業員の方々が、このどちらの努力をしているのかよくご覧になって対応されることが大事だと言える。

<ワーク・エンゲイジメントと2つの資源、メンタルヘルスへの影響>

● ワーク・エンゲイジメント、つまり「いきいき働く」ということは、①個人の資源と②仕事の資源が増えることで高まると言われている。個人の資源とは、一人ひとりが自信を持って仕事に取り組むことができているといったもの、心理学でいう"自己効力感"を指す。仕事の資源とは、上司からのサポートや同僚との支え合い、信頼関係、仕事のやりがいといった組織が持つ強みを指す。
● これら2つの要素が充実すると、ワーク・エンゲイジメントが高まり、さらには、心身の不健康度も低下させてくれる。つまり、上司からのサポートが充実し、お互いが支え合い、一人ひとりがやりがいを持って仕事をしているといった温かい職場では、単にいきいきと働けるだけではなく、メンタルヘルスや体の不調も低下すると言える。
● ワーク・エンゲイジメントを高めていくために、新たなメンタルヘルス対策を一から始めなくてはならないのかというとそうではなく、従来から実施されているラインケアやセルフケア、職場環境改善といったものに、少し視点を加えるだけでも十分である。

<ストレスチェック制度における「集団分析」を活用した組織活性化>

● ストレスチェック制度を、単にメンタルヘルス不調対策だけに使用するのではなく、職場環境改善や活力ある組織づくりに活用してくことが必要である。そして、活力ある組織づくりの方法として、1つは組織の悪いところを減らすことが挙げられるが、それ以上に、組織の良いところ、強みをいかにして増やしていくかが大切である。
● 厚労省が推奨する57項目の職業性ストレス簡易調査票があるが、これに23項目追加した「新職業性ストレス簡易調査票」を使用すると、より多くの組織の強みを測定することができる。こちらは厚労省の研究班で作成したもので、無料で公表している。

<コミュニケーションとメンタルヘルス>

● 職場での助け合いやコミュニケーションのあり方とメンタルヘルスの関連性についての調査(公益財団法人日本生産性本部)によると、メンタルヘルスの不調が増加傾向である企業では、「職場での助け合いが少なくなった」「コミュニケーションの機会が減った」という回答の割合が高い傾向にある。
● 因果関係として、メンタルヘルスが悪化したからコミュニケーションが悪化したのか、あるいはコミュニケーションが悪化したからメンタルヘルスが悪化したのか、順序は不明であるが、メンタルヘルスと職場におけるコミュニケーションのあり方に、相関性があることが分かってきた。

<CREW(クルー)プログラム>

● チーム内の人間関係において、お互いを尊重し合う関係性を築きながら、職場の活性化を図っていくため、定期的なミーティングを6か月間開催し、尊重し合える環境づくりに影響を及ぼしそうな内容を話し合うもの。
● ある病院内の某病棟を対象にCREW(クルー)プログラムを実施したところ、職場の雰囲気や職員間の礼節の程度において好影響が見られ、ワーク・エンゲイジメントの得点も高まることが分かった。つまり、チームで仕事をする際に、何でも話し合えるような雰囲気づくりを行い、それを土台にお互いを尊重し合える職場づくりをしていくことは、いきいきとした職場に繋がっていくと言える。

<ジョブ・クラフティング(匠の技)>

● 仕事のやり方やその仕事に対する物の見方・捉え方、また、仕事における人間関係を工夫することでやりがいのある仕事へ変化させていくというもの。
● 実際に、ジョブ・クラフティングの研修を行ったところ、ワーク・エンゲイジメントの得点が上がり、ストレスの得点が下がることが分かった。仕事のやりがいや何のために働くのか、あるいは働くことの喜び等を突き詰めて考えることが、いきいき働くことのきっかけに繋がるということを再認識できた。

 

パネルディスカッション 「健康でいきいきと働ける職場づくり:経営学と取組事例から考える」

   【パネリスト】 ● 島津 明人 氏
            ● 北居 明 氏 ( 甲南大学経営学部 教授 )
            ● 深田 尚弘 氏 ( 日本ビルコン株式会社 管理部 係長 )
            ● 奥田 美保 氏 ( 株式会社マックツイスト 取締役・営業部長 )
 
  

事例紹介パート 

 
[ AI(アプレシエイティブ・インクワイリー)を用いた職場改善~対話型組織開発とは?~ ]

北居 明 氏 ( 甲南大学経営学部 教授 )

 

<人材開発と組織開発>

● 日本では、これまでは階層別研修等の比較的個人に焦点を当てた能力開発や人材開発(人材育成)に注目して力を入れてきた企業が多い。人材開発(人材育成)は、個人の力は伸びても、職場での助け合いやコミュニケーション、チームワークの醸成は、管理職任せになってしまう等うまくいかない点がある。
● 組織開発とは、例えば資源の選択と集中や階層のフラット化等の組織構造の改革に取り組むこともあるが、第一義的には、人々の考え方や行動といったものに直接関与し、影響を与えることによって職場をよくしていこうというものである。

<組織開発~診断型と対話型~>

● 診断型:インタビューやアンケート、ストレスチェックといった何らかの方法で職場の現状を診断して今職場がどのような状態にあるのかを正しく理解しようとし、理想と現状のギャップを埋めていく課題解決型アプローチ。
● 対話型:問題解決を図ろうとする際、これしかないと思っているとなかなか現状を打破できないが、別の考え方に気付くと解決の糸口を得られることがある。このように、新たな行動や思考のオプションに気付かせ、クライアントと介入者が共に作っていくような手法。
● 診断型の特徴は組織の抱える問題を「障害」や「病気」、「機能不全」としてみなし、その問題を発生させた原因は何なのかと原因分析を行う。その結果として、適切な処方箋を作り出して治していこうとするものである。
● 診断型の組織開発のもう一つの特徴として、「何が問題か」という議論から容易に「誰が問題か」という犯人探しにすり替わってしまったり、組織を「問題ありの部分:治療される側」と「問題なしの部分:治療する側」に分断してしまったり等、意図せざる結果をもたらすことがある。
● 問題の原因を探る問いかけというのは、"問題"をそこに確かに存在するものとしてしまい、人々は自らの組織を「欠陥のあるもの」とみなすようになる。
● 組織問題や人間関係の問題を、物質と同様の扱いをすると、常に変化し続けているということを見逃してしまう危険がある。

<アプレシエイティブ・インクワイリー(Appreciative Inquiry:AI)>

● 問題のみに焦点を当てて、それを潰していくアプローチがその会社や組織を強くするとは言えないのではないか。組織の良い側面や強み、資源を伸ばすことによって問題を取るに足らないものにしてしまう、そのようなアプローチの方がプラスの影響を与え、生産的かつ近道なのではないか、このような発想から生まれてきたのがアプレシエイティブ・インクワイリー(以下AIという)という考え方である。
● 通常の組織開発が、悪くなっている原因を探るのに対し、この組織をいきいきとさせている原因を探るのがAIの特徴である。

<AIの進め方と期待できる効果>

● AIは以下のサイクルで進める。①問題に対するポジティブな問いかけを立て、②その問いかけに対して自分たちを最も意欲的にさせたエピソードを探る。つまりこれまでの組織の強みや資源を探り、それをシェアするといったプロセスになる。③エピソードを基に、こういう風な組織にしたいという将来像をできるだけ具体的に描き、④その将来像に近づくために、今の組織をどうしたいのかというデザインを描く。⑤そしてそのデザインで描かれた組織像にするために何をやっていくのかということを考えていく。
● メンタルヘルスのテーマを例にすると、メンタル不全者が多い職場の場合には、「メンタル不全者をなくすにはどうすればよいか」という問いかけは、基本的にやらない方がよいというのがAIの考え方になる。AIでは、ジョブ・クラフティングの話のように、「そういったものがなくなって、みんながいきいきと働いている場合、どんな職場になっていますか」といった問いかけになる。この問いかけに答えることによって、結果的にメンタル不全者を少なくしていこう、そういった職場風土作りに向かっていく。
● AIはかなりポジティブな力があると考える。どこが悪いのかという問いかけよりも、どこが強みなのかと考えることで、人間からポジティブな力を引き出せると思う。ポジティブな感情は、非常に考え方に柔軟性・創造性・統合性を与え、情報に対して開放的かつ効率的にさせるといった研究がある。恐らく、これがAIの効果であると考えられる。

<補  足>

● 私の話を聞いて、診断型はちょっと駄目だというようなニュアンスで伝わったと思うが、そうではない。診断型で、例えばある部分が低いと出るわけだが、AIの精神でいくと「もしこれが良くなったらどうなってるのか」とか、「これが良いときってどんな状態なのか」という問い掛けをするのが、対話型の答えになる。要するに、よくないのは、例えば、診断をして悪い状態である場合、その原因を人間に求めるということが良くないということである。その状態がましなとき等を考えてほしい。

 

[ 日本ビルコン株式会社(深田 氏)の取組事例紹介 ]

 
<取組内容① ~ストレスチェックの導入~>

● 2011年にストレスチェックを導入。集団分析結果の活用として、一定の基準を超えた部署を抽出し、実際の勤務状況や業務内容等の確認を行い、過度な勤務状況になっていないかをチェックしている。
● ハイストレス者の面談では、面談を行う支社長に対して面談の留意点についての案内文や、対象者ごとの面談シートを渡し、睡眠状況・疲労状況・業務の状況・部署の人間関係・会社に対する要望・専門機関の受診の有無等の質問を聞いてもらえるよう依頼していた。また、数は多くないが、2年連続ハイストレス者として面談を受ける社員が対象となるときは、業務内容を中心に、よりきめ細かい面談をお願いしていた。なお、法制化後の今年からは産業医との面談に切り替えている。
● 対象部署の業務を洗い出し、見直しや指導等を行うことで、業務の無駄の改善等の効果を得られている。

<取組内容② ~退職者アンケートの実施~>

● これまで、退職理由の確認方法は、人事担当者からの報告や稟議書の内容で確認していたが、退職者本人の本音の意見が分からず、退職者の本音を聞き出す方法はないかと、社長に打診されたことをきっかけに始めた。方法としては、従業員満足度調査に基づく退職者アンケートを行っている。
● 退職理由に挙がった「労働時間・環境が不満」、「充実した仕事に重要だと思うことは」という問いに対して挙がった「プライベートと仕事のバランスが取れること」を基に、共通して言えることは長時間労働であると判断し、所属長等に対して、労働基準法でうたっている、労働時間の取り扱いや、三六協定等の弊社の運用の説明会などを行った。
● 退職者アンケートの他の項目としては、在職期間中の満足度・給与・評価制度の満足度・役員及び所属長に対する評価を記載してもらう欄も設けている。
● 退職者アンケートの効果として、女性の事務方の残業削減が挙げられる。事務方は、月次の締めの時期を除いては、深夜にまで仕事が及ぶことはないが、現場作業員は繁忙期には深夜に帰社することも多く、事務方はその帰りを待って帰宅するという、帰り辛い雰囲気があった。同アンケートを基に本人への直接確認も実施し、直ちに是正した。

<取組内容③ ~異動希望者のフォロー面談~>

● 自己評価表に異動希望を申告したが利用しなかった社員を対象にフォロー面談を行っている。従来の自己評価表は、業務内容を中心としていたが、異動希望を出したにもかかわらず異動しなかった社員をそのまま放置すれば、「異動の希望は聞くことは聞くけども、何もないのか」と従業員に思われ、ストレスの原因になるのではないかと考えフォロー面談を始めた。
● 配置異動という1つの項目に特化した面談を実施することにより、人事考課では話せなかった深い話ができたという社内の声を得ている。

<取組内容④ ~飲食を伴うブラザー・シスター制度~>

● 従業員同士が本音で話ができる場の提供をしたいと思い、飲食を含めた制度にした。対象者は、新入社員から3年目まで。飲食費用は、社内研修所において1~2万円程度ということで、缶ビールを1人2缶程度に、おつまみを用意するという形で行っている。
● ブラザー・シスター制度を実施するに当たり、従業員と、できれば経営層が、同じ場で胸襟を開いて話せる場を作りたいと思っていたところ、本年2月に、東京都主催のポジティブメンタルヘルスを推進したい企業を対象とした交流会に参加し、そこでブラザー・シスター制度を活用している企業の話が聞けた。
● 持ち帰って社長に話したところ、支社長会議の場で提案してみてはということになり、まず手始めに神奈川支社で導入を始めた。そして、本年9月からは、東京支社においても導入を始めている。

 

[ 株式会社マックツイスト(奥田 氏)の取組事例紹介 ]
 

<同社の特徴>

● 社員のほぼ全員がクライアントに常駐して業務している。5~6年前まではグラフィックデザイン業務を受託し、100%社内で制作してたが、今はほぼ全員がクライアント先に常駐している。

<取組内容① ~3行日報~>

● 1人でクライアントに出向いて業務している社員と、毎日欠かさずメールによる日報のやりとりをしている。大切にしているこは必ず返信すること。そして、送ってくれた内容に対して共感し、褒めること。取組を始めたきっかけは、数年前に取り組んだ「若者チャレンジ奨励金」の中の訓練日誌であった。同奨励金は途中で断念したものの、訓練日誌のやりとりが、受ける側も書く側も、「意外といいよね」という話になり、現在も継続している。
● 工夫として、堅苦しくなく、気軽に気持ちをアウトプットできるように「3行でいいから、今日あったことを知らせてね」というアプローチで行っている。
● テーマは、「今日の嬉しかったこと」とし、①いつどこで何をどうした、②それでどうなった、③どんな気持ちだった。この3行としている。テーマが「今日の嬉しかったこと」であることが要であり、好きなことを仕事にしているとはいえ、やはり日々楽しいことばかりではなく、日報のテーマを「今日の振り返り」にすると、つい「これが大変だった」「こんなことができなかった」等ネガティブな方向にいってしまいがちになる。
● 1日の終わりに、今日の嬉しかったことを探すということを習慣にしてもらいたいという思いから同テーマを設定している。それでも嬉しかったことが1つもなかったといったときは、そんなときこそ日報に対して、共感し、褒めるよう心掛けている。

<取組内容② ~全体ミーティング~>

● 社内の制作業務より、クライアントに常駐するスタッフが増えてきた際に、常駐先での自分って何なのかと不安に思うデザイナーが出てた。それをきっかけに、社員にとって自社はどういう会社組織であるべきなのか、ということを考えるようになった。そこで、年に数回は全員で顔を合わせる機会をつくることにした。
● 初めのうちは毎月集まっていた。それぞれが1か月の業務報告をし、フリーディスカッションをして、「月に1度みんなで集まるのが楽しい」と社員も言ってくれていたが、回を重ねるごとに業務報告では「特に変化はない」という報告をしたり、出席しない人が出始めたりしてしまい、毎月の全体ミーティングが形骸化するようになってしまった。そこで現在は、ミーティングの回数を減らし、1回のミーティングに小さな議題やイベントを用意するようにしている。
● 一例だが、全員にメモ用紙を2枚渡し、1枚には現場の仕事において嬉しかったこと書いてもらい、2枚目には現場の仕事において辛かったことを書いもらう。そして全体共有するということを行っている。また、同じクライアントや担当している業務が似ているメンバー同士で集まって、お互いに分からないことをシェアして、教え合い、一緒に学ぶということもやっている。

<取組内容③ ~学びの場の提供と健康管理サポート~>

● 当社には、3Dソフトやアニメーションのソフトを自由に使えるクリエーティブルームという部屋があり、ここで勉強会を開催している。また、土日も開放していて、社員が自由に使えるようにしている。
● 勉強会の例として、講師を招いてのキャラクターデザイン講座や、社員が講師となって同僚に対して開いてる3D講座等がある。
● デザイナーは長時間座っての仕事となるため、腱鞘炎(けんしょうえん)、腰痛、肩こりが職業病である。プロのインストラクターを招いて、仕事の合間や就寝前のストレッチなどを学べるようにしている。

<取組内容④ ~コミュニケーションの活性化~>

● ワーク・エンゲイジメントの実現のために、とにかく社員と会社、社員同士のコミュニケーションを大切にしている。何かあったら、どんな些細なことでもよいのでいつでも連絡してきていいと社員に伝えている。こちらからは、何もなくても「ランチしようか」、「飯食いに行こうか」と、私や代表が社員と食事を共にすることがよくある。特に、何も言ってこない社員、問題をこちらに投げかけてこない人こそ、「最近どう?」とこちらから積極的に声を掛けるように心掛けている。
● 取組の成果について、すぐに出るものだけではないということを常に心に留めて取り組んでいる。ワーク・エンゲイジメントということを考えると、やはり社員、働く側が能動的であるということが要だと思う。会社は、きっかけとヒントを用意するだけなのではないかと思う。

 

ディスカッションパート

 

<シンポジウム申込時に受けた質問への回答>
 

◆ 「多様化する社員に対して、一環した活力向上やいきいきとした職場づくりが良いのか、個々に合わせる事が必要なのか。企業としてそこまで手を掛けなければいけない時代なのか。中小企業では、正直厳しい選択である。」

● 島津 氏

 一人一人の活性化なのか、組織の活性化なのか、どちらを優先すればよいのかということだが、私は両方繋がっていると思う。組織の活性化というとトップダウン、個人の活性化というとボトムアップというふうに考えられるかもしれない。しかし、組織を動かそうと思っても、一人ひとりの意識が変わり、行動が変わっていかないと、組織全体は動かない。どんなによい仕組みを作ったとしても、やはり一人一人の心に火を付けていかないと行動は変わらない。
 お互いがお互いを信頼し合い、どのような温かい職場を作っていくかと考え、お互いを信頼し合える組織が出来上がっていけば、組織のトップが一人一人の社員の人たちの行動に目を掛けなくても、後は自律的に動いていくのではないかと思う。自律的に動き始めるまでは、会社側もしっかりとそのような風土づくり、仕組み作りに手を掛けていかなければならないのではないかと思う。

● 奥田 氏

 当社も中小企業であるため、制度として考えたときに、人事部何名という組織がある大手企業であればできるだろうけど、自分たちの会社では難しいかもと思うことがある。しかしこの場合、そこを狙うのではなく、中小企業なりの風通しの良さというかメリットを生かし、小さな規模の企業だからこそできることから始めるという方法もあるのではと思う。

 
◆ 「社内でのメンタルヘルス対策としてポジティブメンタルヘルスをどのように取り入れるか?(セミナーは実施済みだが、継続的に取り組んでもらうための効果的な方法はないか)」

● 島津 氏

 質問に回答する前に、先ほどの2社の事例のポイントについて述べる。日本ビルコンの深田さんは、まず仕事を好きになる、そのことが最終的に企業理念である「心豊かな仕事の創造」につながると言っていたが、ではどうすればその仕事を好きになることができるのか、これに対し、同社はやりいを見つける前に、仕事を好きになる前に、仕事に自信を付けさせる、ここに注力しているのだなと思った。
 若手社員は何がやりたくて来たのかなとか、何にやりがいを持てているのか等が自分自身で分からず、旅立ってしまうことが多いが、その前に「やったらできたぞ」といった達成感を持たせられるかどうか、そこがすごく大事だと思う。そこに非常に注力されている事例だと思う。
 マックツイストは客先常駐とのことで、こういった場合、居場所や帰る場所をいかに作り出していくかということがとても大事である。そこにエネルギーを注がれている事例である。心理学で言うと、上司や会社が自分に対して無関心であることは一番辛い。そこを「無関心でない、繋がっている、あなたのこと私が見ている、会社が見ている。」とメッセージをどのように伝えることができるか、これはどんな企業でもできるのではと思う。
 この2つの事例は、ポジティブメンタルヘルスを何をどこから導入すればよいのかということと非常に密接に関わっている。社員が自分たちと会社が繋がっていると感じる、これをいかに醸成できるかどうかに、ポジティブなメンタルヘルス、つまり充実していかに働くかやメンタルヘルスの良好な状態に繋がっていくのではと思う。

● 北居 氏

 日本ビルコンのブラザー・シスター制度、これはメンタリング制度とも言うが、これを制度として取り入れると効果が出ない会社がとても多い。しかしそれが形骸化しないように、飲食を含めてやるといったちょっとした工夫をされている。大変な工夫であると思うが、本音を聞けるようなメンタリング制度にしようとされてるところが非常に効果的かなと思う。
 マックツイストのSEもストレスが高い仕事でとても有名であるが、SEのストレスの源というのは孤独感であることが多い。そうした距離が離れている上司と部下の間でのコミュニケーションを、3行日報という方法を取る等、それぞれの職種、それぞれの問題に合わせて、自分たちのやりようで工夫されていると思う。
 質問の「継続的に取組んでもらうための効果的な方法」ということであるが、すごい効果的だから、これはやるべきだと思ってやると、あまり続かないことがとても多い。それよりも、明日からでも気楽にできるようなことから始めるというようなことが大事になってくる。ラインの長の方に承諾を得て、できるだけその職場の多くの方が参加できるような、しかも気楽に参加できるような活動からまずは始めるとよい。それが第一歩かなと思う。

● 島津 氏

 ポジティブメンタルヘルスだからといって、従来のメンタルヘルスと全く違うことをやらなくてはならないかというとそうではないし、ポジティブメンタルヘルスだからといって、従来の経営やマネジメント、部下への対応と全く違うことをゼロから始める必要はない。
 これまでやっていた対応でこれはいいのではということを、みんなでいろんなテーブルに出し合い、これを横展開していく。このような作業を一回やると「これがポジティブメンタルヘルスなのかな」といった実感が湧いてくるのはないかと思う。

● 深田 氏

 当社では「あいさつ運動」を本年から始めていて、これは数年前から社長発信のような形で社内アナウンスをしていたが、形骸化してしまっていた。なので、もっと具体的に、誰が誰に対して何をするかというところまで落とし込んで発信することで、今のところは継続して実施できている状況である。

 
◆ 「メンタルヘルス施策の実施にあたり、年度計画に目標・実施事項・評価項目等を記入し、確実に回る仕組みを構築したいと考えているが、特に実施事項や評価項目に何を設定すればよいのか迷っている(例:ワークエンゲイジメントであれば社員満足度?等)。

● 北居 氏

 今日のポジティブメンタルヘルスの評価項目とすれば、ワーク・エンゲイジメント、あるいはジョブ・クラフティングである。各項目があるため、自社に合わせた形で修正して使うと、ポジティブメンタルヘルスの評価項目として使えるのではないか思う。良い部署ではどんな取組をやっているのか、その部署で実施している良いことで、他の部署で真似できることはないか。そういった形で評価項目を利用すれば展開しやすいんではなかろうかと思う。

● 島津 氏

 メンタルヘルス施策の年度計画の中にどんな指標を入れるべきかということだが、これは恐らく、会社の長期目標や短期目標の中に、メンタルヘルスをどのように入れ込んでいけるかということに、非常に関わってくるのではないかと思う。
 例えば、会社の中のメンタルヘルス体制の中で、長期休業者が非常に多いのであれば、それが大きな目標となってもこれは仕方ないと思うし注力しなければいけないと思う。しかし、そうは言ってもいきいきとした従業員を1人でも増やすという考えが重要であれば、ワーク・エンゲイジメントという指標を入れてもよいのではと思う。
 つまり、自社内で起きていることが何なのかということを見極めた上で、何を指標とするのかということが大事である。もう1つ、実施事項と評価項目とあるが、恐らくこれは「アウトカムの評価」と「プロセスの評価」ということを気にしているのではないかとお思う。アウトカムの評価とは、長期休業者が何割減ったかといったような結果としての評価、プロセスの評価とは、何がどこまでできたかというようなこと。自分たちが立てた目標、行動、これがどのくらいできたかどうかであるが、これに関しては具体的に入れ込んだ方がよいと思う。

 
◆ 「社内ワーストワンの高ストレス職場に、昨年10月副部長として異動してきた。「孤業」から「協業」の職場へ改善すべく、①部長による部員の個人面談、②助け合う職場にするためには何をすればよいか?等のAIを応用したセッション、③毎週月曜日の朝ミーティング(立ったままで10分間、スケジュールや課題を共有→課題解決は別途打ち合わせ)等一年間取り組んできた。ストレスチェックの解析結果がまだ返却されてきていないが、手応えは感じている。今後更に活性化するための働きかけ等について、成功例等教えてほしい。」

● 北居 氏

 組織の課題というのは、段階等のレベルがいくつかあり、もしそうしたコミュニケーションが良くなって、高ストレスの状態でなくなってきたら、次の課題についてAIを実施してもらえればと思う。人材が育ち、組織が良くなってきたら、より具体的に、例えば生産性に直結するような課題に対して取り組んでいけば、この活動をもっと広げていけるのではないかと思う。

● 島津 氏

 社内ワーストワンとあるが、ここまで高いストレスの職場では、恐らくいろんな対策をやってきたのかもしれない。ここで私が思うキーワードは「体感」だと思う。というのは、これまでのストレス対策というのは、いろいろ手を動かしたり、頭を動かしたりしてきたと思う。しかし、体として実感として良くなったなとか、悪くなったなというのはあまり実感できていないのではないかと思う。なので、お互いを信頼し合うというようなことを、体で感じ合うような体験というのが、もしかしたら欠けているのではないかと思う。
 体感型のトレーニングや自分の意見を言っても大丈夫なんだというような安心できる職場づくり等、少し根本的なところ、いわゆるチームビルディングから入ってもよいのではと思う。

 
<会場からの質問への回答>

  
◆ 社内でライン研修をしている際に"ポジティブメンタルヘルス"という考え方について、「管理職から従業員に対してメンタルヘルス上タフであれとか、ポジティブであれということを要求することは過剰ではないか。労働契約上そんなことを要求することはできないのではないか。それをあまり人事が推進するのは危惧を覚える。」といった反応を得た。そういう用語に反応してしまう人に対し、その辺りをケアしながら解決できる方法等あればヒントを教えてほしい。

● 島津 氏

 "ポジティブ"という言葉をどのように捉えるかといった、禅問答みたいな話になるかもしれないが、ポジティブというのは、万能感を持って強い鎧を着ていこうではない。その人が持っている、その人なりの良いところや強み、その状態を引き出すことができるかどうか。あるいは、その人がその人なりに、いかによい状態で仕事ができるかどうか、こういったところを引き出すのが、ポジティブなメンタルヘルスではないかと思う。
 なので、決してその人が持っている弱みに目をつぶり、たくさん働かさせる、それを助長させるようなものではないと考える。

● 北居 氏

 先の大阪の会社では、「アプリシエイティブ・インクワイアリーというものがある」と話をしたが、「先生、そんなんうちの社員がアプレシエイティブ・インクワイリーなんか言えまっかいな」といったような話になった。なので、そこでは「情熱と強みを取り戻せ」という名前の研修で、アプレシエイティブ・インクワイリーという言葉を一切使わずに実施した。ポジティブという言葉も恐らく使っていない。その会社の社風に合った言葉を使って、そこの社員が、「これなら私たち目指したいよね」と思えるような用語で十分ではないかと思う。

● 島津 氏

 企業理念とどう照らし合わせて言葉を作っていくか、企業に合わせていくかという。北居さんの言葉を借りると、いかにしてそういった言葉を企業の文化に落とし込んでいくかが大事だと思う。例えば、日本ビルコンでは、「心豊かな仕事をする」これも、ポジティブメンタルヘルスのすごく大事なメッセージだと思う。なので、こういった企業理念や、行動指針等に落とし込んでいくという作業が一つ必要なのではないかと思う。

 
◆ 部長が動いてくれないため情報や意思決定がそこでボトルネックになってしまい、それに対して部下や課長、一般事務員が非常にストレスを感じている。新任の課長として、上司である部長をどういう形でうまくサポートすれば組織が良くなるのか。何かヒントをいただきたい。

● 奥田 氏

 同じようなテンションで毎日挨拶をする。そこからスタートするのはどうかと思った。空気が重いことに対し、一番よい特効薬は、個人的には挨拶だと思っている。次にお薦めとしては「お疲れさまです」や、あるいは「今日は暑いですね」等何でもいいので、そこを会社劇場の俳優に成りきって頑張ってみてはいかがだろうか。

● 深田 氏

 ご紹介した当社の取組は、当然経営者等の上長の承認があって実施しているが、私は非管理職なので、社長室に飛び入って「お願いします」と言っても承認は簡単には降りない。ではなぜ少しずつできたのかなと自分なりに考えてみたところ、例えば廊下ですれ違った際に多少会話をする機会があるが、そのときにちらっと聞いた社長の「こうしたい、ああしたい」といった話に対応していてことが影響しているのかなと思った。絶えず情報のアンテナを張っていく、それを取りこぼさないように自分が武装していけるのかが重要なのではと思う。

● 北居 氏

 AIの考え方からいくと、部長が動いてくれないというときに、「なぜ部長が動かないのか」という問い掛けをすると、恐らくどツボにはまってしまう。しかし、パソコンと部長は違うわけで、部長が動いたときも必ずあるはずで、365日、24時間動かないわけではないと思う。なので、事務長が動くときと動かないときでは何が違うのか。そういう視点で部長を動かすきっかけを探ってもらえればと思う。

● 島津 氏

 メンタルヘルスの相談でも同じことが言えるが、うまくいっているときはどんなときなのかと例外を探していくことが大事かなと思う。そのためには、よく観察することが最初の前提だと思う。

● 中辻 氏

 私がお薦めおすすめしているのは仲間を探すということ。同じように考えている方、例えば、話をしながら、もしかしたら仲間になってくれるかもしれないというような人を集めていく。その小さな集まりも、いずれ大きな力になり、その力をもって、部長を無理に動かすというより、組織全体に風を吹かすというようなことをやってもらえるとよいのではと思う。

 

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