非正規労働者雇用環境整備支援事業

専門家紹介

写真:工藤剛さん

工藤 剛 さん

くどう社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士

2004年、くどう社会保険労務士事務所開設。
以後、「仕事と家庭のバランス」をモットーに、保育園・幼稚園専門の社会保険労務士としてコンサルティングを展開。08年、東京都雇用環境整備コンサルタントとして、非正規雇用社員の雇用環境改善のため、メーカーのコンサルタントを担当。

 

 

人的資源の有効活用なくして、これからの経営は成り立たない

専門にしている保育園や幼稚園の労務改善の現場では、よく次のような状況に出くわします。いまだに「結婚=退社」という暗黙の了解が存在している一方で、「人手が足りない」といって悩んでおられるのです。

明らかに矛盾しているわけですが、実はこうした問題は、保育園、幼稚園に限ったことではありません。一般的な中小企業が抱える問題の象徴といっていいでしょう。雇用環境の整備や意識改革が進んでいないために、人材が定着せず、慢性的な人不足に悩まされている──。こうした中小企業は非常に多いのです。

問題を解決するには、例えば結婚・出産・育児で一時期職場を離れても、復帰できる雇用環境を整えるなど、"人的資源"を有効活用するほかありません。そのためには、パート社員をはじめとする非正規雇用社員の雇用環境改善も不可欠となるわけです。

ここで、実際に雇用環境の整備に取り組んだある企業の好例を紹介したいと思います。

私が、東京都雇用環境整備コンサルタントとして2008年1月~3月にかけてコンサルティングを担当したトライ企業は、従業員数60名弱、うちパート社員は10名弱の自動車部品メーカーでした。

具体的な支援に入る前に、ご担当である常務から、会社の現状についてじっくりお話をお聞きしました。そのうえで、5回という限られたコンサルティングのなかで、「何を改善目標とし」「どういう手順で進めていくか」を明確化し、スケジュールを作成することにしたのです。

何事もそうですが、走り出す前に"進むべき方向"を明確にしておかなければ、あとで「こんなはずじゃなかった……」という行き違いが生じかねません。

この会社の場合には、「改正パートタイム労働法に準じて就業規則を見直したい」という希望がありましたので、コンサルティングのなかで、既存の就業規則をすべて確認し、改善点の洗い出しを実施。ひとつひとつの就業規則を検証していくなかで、「パート社員から正社員への転換制度」や「パート社員に対する健康診断の実施」といった項目を加え、非正規雇用社員に対しての環境整備を図りました。

また、そのほかで特に実りが多かったのは、3回にわたって開催したパート社員さんとのランチミーティングです。「最近、暑くなってきましたね」なんていう他愛もない会話のなかから、「機械もあるし、工場内の気温調整が大変なのよ」といった思わぬ本音をお聞きすることもでき、環境改善の参考になりました。どこの会社でも、普段パート社員が面と向かって上司に意見を述べにくいことも確かにあります。例えば「ご意見ボックス」を社内に設置するなどして、こうした現場の声を汲み上げる工夫が必要なのだと思います。

 

「働きやすい職場環境づくり」と企業競争力

しかし、いくら会社の上層部や私たちコンサルタントが、職場の雇用環境改善に懸命になっても、それを従業員に理解してもらわなければ意味がありません。就業規則にしても、それは会社で働く従業員の労働条件や果たすべき義務、行使できる権利が記されているものだからです。

そのため、コンサルティング終了後には、社内でプロジェクトチームを作り、従業員同士で就業規則や新たな制度の内容を論議し、ブラッシュアップしていくことを勧めています。プロジェクトチームは、できれば「若手・中堅・ベテラン」「正規・非正規」といったように、各世代・各職務から選抜するのが望ましいでしょう。従業員のモチベーションをアップさせるためにも、"みんなで作り上げている感"を大切にしつつ、内容を詰めていくことが重要なのです。

後回しになりがちな労務管理ですが、今回のような東京都の支援策にエントリーすることで、確実に第一歩が踏み出せるはずです。ただし、最初から"完璧"を目指さないこと。就業規則の整備も雇用環境の改善も、時間をかけて熟成させていけばよいのです。大切なのは、"トライ&エラー"の精神だということを忘れないようにしてください。

ここ数年の間に、雇用環境改善に対する企業意識は高まってきました。それでもまだ、関心をもっていない経営者もおられます。そうしたトップの方たちには、ノーリスクである行政の支援策にエントリーするような「トライ」をお勧めします。

人材確保が難しくなっていくなかで、雇用環境改善に対して関心の低い事業者は、早晩、後れをとる可能性があります。一方で、早くから雇用環境を整えている事業者は、従業員が意欲的になり、会社の製品やサービスが向上。結果的には、業績がアップしていくでしょう。

いまや「働きやすい職場環境づくり」といった雇用環境整備の差が、企業競争力の差に直結する時代なのです。

 

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